今日はよいお天気ですが、みきちゃんに報告したいことがあります。明日は台風が来るようですから、今のうちに。
 
 色とりどりに着飾った花たちが、我こそはと季節の恵みを享受するより前に、自ら春の訪れを告げ青空を見上げるように咲く花があります。白木蓮です。その甘い香りと上等の絹糸でこしらえたドレスのような姿に、誰もが一度は立ち止まり眺めたことがあるはずです。
 そんな女の子に出会いました。もちろん本当に会ったことはありません。そのように想像しているのです。彼女はうんと年上の彼の言い付けを守り、その後も誠実に生きてこられました。彼を見上げる少女の瞳はどれほど美しかったでしょうね。

 あなたと私は同い年でしたが、あなたはずっと大人でしたね。幼い私はあなたを見上げるように恋をしました。愛してはもらえなかったけれど、そんな私を慈しんで下さいました。私の気持ちは届かなかったのではありません。今もずっと預けてあるのです。あなたがそれに気付くことはないですが、これからもどうぞそのまま知らずに持っていて下さい。
 この想いがあなたの御守りになれますように。








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