大事な人のやさしい心が溢れてしまいそう

少年が涙を堪えた一瞬は永遠となりました

昔要らない幸せを埋めた西の丘にいます
十六歳の私は冬のあなたに会いに来ました

佳い人と出会い手を携えながら生きて来た
私の知らない大人のあなた、ではなくて
夢を叶えて立派になったあなたでもない
時が眠らせたままの少年を探しています

私が誰だかわからない気の毒な人だもの
あなたは永久に尊いあの子を越えられない

もう泣いたってやさしい声もかけられない
足早に家路を急ぐ見知らぬ人より遠い存在
この人もたくさん生きて分かったかしら
ただの運命どれも大した意味などないわ

さあ気の済むまで眺めたら知らんぷりして
粉雪の舞う哀しい風にまた飛ばせばいい

欠片は心の空白で僕が必ず見つけてやると
目の前に佇む少女へどうぞ約束して下さい

 ねえ、

どんな人でも百万回生きられるとしたら
そのうち一回を私と生きてみませんか?
くだらない、なんて直ぐ決めつけないで
一度だけ私と生きてみませんか、そしたら

やっと思い出しあの愛おしい文句を言って
こんな幸せもいいものだな、と笑うから

どんな人の命の蝋燭もいつかは燃え尽きる
今生限りの灯心にあなたの炎を点すのよ
背伸びしてどれだけ目を凝らせば散る雪に
震う灯火を見つけることができるでしょう

暮れて東へ誘うロウソクに灯る魂は瞬けば
後ろの正面はるか彼方の時空へ飛び立て


          











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