○穂へ

今は元気でいるか?
膝が良くないって言っていたけど具合はどうだ?

数年前SNSで、「貴方と忘れられない高校生活を送った○○です。」と突然メッセージを
くれたね。
直ぐにお前とわかった。40年近くも昔、高校時代付き合っていた頃の日々。俺だって忘れてなんかいなかったよ。

暫くメッセージのやり取りで、二人東京に出て別れた後のお前の人生と現在の暮らしを聞いて驚いた。動揺したよ。

「声を聞きたい・・」「声を聞いてどうなるんだよ?」俺は冷たく突き放してしまったね。

離れていてもせめて心の支えになってあげたい。と思う反面、お前は理由もなく俺を捨てた女。突然現れて迷惑かけるつもりないなんてお前は言ったけど、動揺した俺はなんて女々しいんだろう。勝手な女!と。

「さようなら・・」とメッセージ残して去ってしまったね。

俺はね、お前がメッセージくれた頃もそうだったけど、ずーーと生き辛さを抱えて生きてる。心の病を抱えていながら。
それが幼少期の親子関係とか家庭環境とか、持って生まれた気質なのか複雑だけど。
けれど生きているよ。

だからお前からメッセージが来たときは、人生半ばを過ぎているのに一瞬で高校の時の自分に戻ったよ。
けれどそんな状態の俺には、とても苦しんでいる現在のお前を救う事も支える事も出来なかったんだ。

俺とお前は出会って、どうしてあれ程惹かれ合たのだろう?求めあったのだろう。

あの頃お前と下校時よく寄った喫茶店、もうやっていないけど残っているよ。

人生半ばを過ぎて尚更昔を振り返ってしまう。そこには必ず○穂、お前が出てくるよ。

俺とお前の事を思うと、ある一冊の恋愛小説を思いだします。辻仁成の「サヨナライツカ」。ストーリーが俺とお前の事のようなんだ。読んでみて欲しい。

叶うなら、2人で下校した駅までの道を当時を振り返りながらまた歩きたい。

お前と別れられない高校生活を過ごした
○一より。


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