みきちゃん、明けましておめでとうございます。楽しい年末年始を過ごされましたか? この時も相当厳しい局面にあって、責任ある立場ではお正月気分など味わえなかったかしら。お気の毒に。でもあなたの周りにはたくさん人がいる。いっ時助けてもらって支えてもらって生きるのは恥ずかしいことではないわ。私がそばにいてもきっとそうする。あなたを独りになんかしない。それにあなたなら必ず立て直せるから希望を捨てずに前を向くのよ。でもお願い、くれぐれも無理はしないでね。
 実はね、この数日間はあなたがとても近くにいるんじゃないかって考えた。今すぐ駆け出せば会えるんじゃないかってね。だけど、こんなに大事なあなたをよ、私のことなどこれっぽっちも覚えていない「通行人A」なんかと引き換えられるわけないじゃない? だからもっと先、人生の黄昏時を迎えたあなたが、記憶の宝箱からいつか私の欠片を見付けてくれる日を、のんびりと楽しみにして待っているわ。だけど予定ではあなたの方が少し長生きするはずだから、出来ればちょっとだけ、急いで下さいね。
 私は今年も家族と少し贅沢をして、おせちやお雑煮、すき焼きの鍋を囲んだりして楽しく過ごしたのよ。京都人らしいでしょ。私は私の家族を大切に思っているし、良妻賢母には程遠いけど尽くしています。そして彼等からも幸せをもらっている。だから不幸になってあなたを思い出し、あなたの想い出に縋って生きているのではないのよ。やさしいあなたは心配しないでね。これはそうね、絶対大好きなあなたの後ろをバレないように、ずっと昔からこっそりとついて来ちゃったって感じかしら。あ、実際にそんなこともあったっけ? あの時はごめんなさいね、もう恥ずかしいから笑うしかない! 

 永遠の片想い。そこには幸せも悲しみも全てが詰まってる。だけどもしもあの時私を選んでくれていても、案外短命で終わったかも知れないわ。二人は若く、私は我が儘、あなたはケチで気が短いんだもの。どちらも譲れなくてきっと大ゲンカしていたでしょうよ。ある時ね、「俺はね、この人はどんな人だろうって思わせてくれる雰囲気の人が好きなんだよ。正しいかどうかなんて関係ないんだ」って、私に宝物を見せながら言ってたの。今思えばあなたも随分子どもだったわね。残念ながらあなたの好みとは正反対の私も幼かったけど、そんなあなたがとても愛おしくて大好きだったよ。
 私はこんなにも大事な人とあまりにも早く出会ってしまった。未熟な私は正直だったから、たとえ形がなくても名前がなくても幸せだった。なのに運命はいつも無慈悲だったし、それでも追いかけた心は罰として深傷を負った。だけどそれがあなたのためになったのだから本望だわ。もっと分別のある大人になってからそばにいられたなら、私はあなたの支えとなり、あなたにも私の心を見てもらえたかしら。
 失礼。通行人Aにはセリフがないから話しかけても無駄だった。だけどね、あなたが好きになったなら正しいに決まってる。そばにいてくれる人を大切になさいね。
 私にとっていつまでも少年のあなたは、心の神殿に住むかけがえのない尊い人。せめて遠くから私にもあなたの健康と幸せを祈らせてね。
 
 みきちゃんは私の大事な人。この世から味方が一人もいなくなったって私が護ってあげる。今年も数多くの幸せと安らぎがあなたの元へ訪れますように。


          冬の京都にて  

                 よう








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